お酒にまつわるエピソードコンクール作品集


第1回
優秀賞(1)
秋田県中仙町 T さん(44歳・女性)の作品

あれは、今をさかのぼること二十余年。まだ私たち夫婦が付き合い始めてまもなく。
はじめて彼を、私の両親に紹介した日の出来事でした。
当時まだ元気だった父が、大の酒好きだったこともあり、二人はすっかり意気投合。
初めて連れてこられた彼女の家で、父親相手に飲むわ、飲むわ。勧められるままに、何の遠慮もなく、あきれる程、つぶれるまで飲んでしまったのでした。
当然、車で帰れるわけもなく、お泊まり。後年、父が私にボソッと一言。
「いやぁ、おれも飲むども、なぁ〜んと飲めだもんだったな。」
酒がとりもつ縁は深かったようで、私たちは、めでたく結婚。父は、盆・正月に飲んべえの婿殿が来るのを、心待ちにしていたようです。
そして、父が亡くなった夜、祭壇の前で、酔って泣いている夫の後ろ姿を見たとき、本当の親子みたいに心が通じていたんだなと、彼の背中で私も泣きました。

第2回
優秀賞(2)
秋田県仙北町 Y さん(63歳・女性)の作品

20数年前、主人の新年会での出来事。すごい吹雪の夜でした。
あるお店のママさんから「奥様に迎えに来てほしいとの、電話をするように言われましたので〜。」と、電話が入りました。
そろそろと思っていたところでしたので、「20分位で着けると思いますのでよろしく。」と、ワイパーをグイグイ回しながら出かけました。
お店のドアを押したら、男性軍団がどーんと盛り上っておりました。そして、所々に美しく見える女性がニコニコしていました。

ママさんが、カウンターのすみにジュースを出してくれました。そのジュースを口にしたその時、ん?主人が立ち上がって『それじゃ、お先に。』と、片手をあげて、あれよあれよという間に、お店を出てしまい、慌てて後を追ったら、店の前に止まっていたタクシーに乗って、帰ってしまったのです。
『何、考えてんの!!??』
タクシーを追って家に着いたら、暖めておいた布団で、何事もなかったかのような顔をして、深い眠りについていました。
 ◇さすが家の主人は、やるな〜◇と、思いました。

第3回
優秀賞(3)
秋田県協和町 I さん(64・男性)の作品

「笑っちゃう?お酒と私の失敗談」
  1. 一杯飲んでからの魚捕りで、堰の底に足を取られ、ドジョウや鮒と共に泥まみれに寝転んだ頃の懐かしさ。
  2. 数人の男女で花火見物後、馴染みの旅館にくつろぎ、一献酌み交わし、雑魚寝をした際、男同士の手足が絡み合い、思わず大笑い。
  3. 中学校の同級会で酒を飲んでから、移動のバス車中でも飲み、前後不覚となり、ツアー途中で家人に引き渡された、恥ずかしい思い出。
  4. 宴会で、一番食べたい好みの料理を残して、上司や仲間にお酌をして廻り、自分の席に戻ったら他人に食べられ、残念だった食べ物の恨みの気持ち。
  5. バーで、カラオケを歌ってるままソファーに倒れ、119番通報で、気が付けば病院のベッド。
  6. 五月の連休に、友人と温泉旅館へ行き、飲みと泊まり過ぎで予算オーバー。チェックアウト出来ず、自宅へSOS「金送れ」で、万事解決。
  7. 宴会の舞台で、夢中になり踊っている最中、浴衣の裾が乱れて、男性自身が披露され、大拍手に赤面の至りなど等。

第4回
優秀賞(4)
秋田県横手市 T さん(32・女性)の作品

「恥ずかしいお酒と感謝のお酒」

祖父も父も大酒飲みという家庭に育った私は、お墨付きの大酒飲みになるだろうと、言われていました。そんな私が二十歳になり、思う存分飲める時が来ました。職場の飲み会に誘われた私は、ほろ酔い気分でお酒をちゃんぽんしてしまったのです。その日は友人に支えられ寮に戻りました。
その瞬間、急に吐き気をもようし、同部屋の先輩が洗面器を持って来てくれ、思いっきり吐きました。酔っぱらっていた私は、何を思ったのか吐いたもので顔を洗い始めたそうです。本人は記憶になく、その後先輩は私を手厚く介抱してくれ、子供を扱うように寝かしつけてくれました。お酒のおかげで恥ずかしい経験をしましたが、人の温かさ、優しさに触れることの出来たのも、お酒のおかげと思っております。
12年経った今でも、友人先輩に感謝しています。これからも人に迷惑をかけずに、おいしいお酒を楽しみにしたいと思います。

第5回

秋田県南外村 I さん(5?・男性)の作品

「大酒飲みの系譜」

四十年以上も前のこと。父が酔っぱらって帰ってくる晩は憂鬱だった。帰るなり囲炉裏の前に座り酒を飲み直す。子供達は神妙に父の説教を聞くはめになる。でも僕ら兄弟にとっては単なる念仏。最後に子供達の頭をキセルでカンカンカンと叩いて、無罪放免となった。ウーム・・・痛かったことを思い出す。
父の頭は禿げていたので、父さんナマハゲ論を信じてた。「酒を飲まネバ、エー父さんダドモナ」と、思っていたが世の中そんなに甘くはない。毎晩、約束のように飲んできた。
ひや酒と親の説教後で効くと言う。これは本当ですよ。なぜなら僕らの脳味噌は豆腐カスにならず、豆腐に頭をぶつけても割れない程度にはなったようだ。説教もキセルも父一流の愛情表現だったことを今、気付く。
素面の時の、はにかんだ笑顔。酔った時の大音声での荒ゲ鬼。その父もすでに帰らぬ人である。そして僕は心身ともに立派な?ナマハゲになった。
さぁ、冷やで、もう一杯!

第6回

秋田県大曲市 (53・女性)の作品

「飲んだら 寝れ! 寝れ!」

今から20年近くも昔の話です。
我が家には親子三代の男性が居て、それぞれお酒の席がありました。
私の娘にとって曽祖父が酔って帰宅すると、曽祖母は決まって「寝なさい、寝なさい。休みなさい。」と部屋へ連れて行くのでした。毎度この光景を見ていた娘は、お酒を飲んだら寝るものだと思っていたのでしょう。
ある時、たまご酒を作っていたら「チョイ」と手を出し「コクッ」と飲んだのです。その早かった事!そのまま何も言わず二階へ行ったきり戻って来ないのです。
行ってみると、服を着たまま両手両足をピンと伸ばして布団へ横になっています。照れくさそうに、そして満足げに「私ネお母さん、お酒飲んだからちゃんと寝ているの。」とのことです。思わず笑ってしまいました。
小さかった娘も今は大学生、休みで帰省すると父と笑顔で乾杯しています。
お酒は楽しく飲んで、休むのが一番かもしれません。


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